8月、高校総合文化祭(いわゆるコンクール)が終わり、私の教室のおさらい会が終わり、私の夏は終わりました。

と言っても、相変わらずの猛暑は続いており、気温的にはまだ「夏」ですね。

 

みなさま、体調を崩されることなく、お元気でお過ごしでしょうか。

今年こそは毎月2回の更新を目標にしておりましたが、7月に1度きり、8月ももはや最終日。

ここを訪ねてくださったみなさま、留守が続いて、ごめんなさい。

 

私が指導している桐蔭高校箏曲部は、今年も私の新作を初演してくれました。

タイトルは、「地上のすべてにあざむかれる悲しみの夜が来ても」。

インドの詩人であり音楽家でもあるラビンドラナート・タゴールの詩集「ギーターンジャリ(歌の捧げ物)」からインスピレーションを受けて作曲しました。

リアルタイムの音楽を作りたい。それが、高校生にとってもリアルタイムのものであるように。

部員は少ないけれど、少ないからこそできること、少なくなければできないことをしたい。

音楽って何?という疑問も投げかけたい。

そんなことを詰め込んで作品にしました。

 

楽譜が揃ったのは、本番の約1ヶ月前。

それから、高校生たちは試験期間があり、試験明けに弾いてもらっては修正を重ね、制限時間に収めるために曲のカットを決め、最終的に完成したのは、なんと!1週間前。

びっしりの五線譜。細かいパッセージ。複雑なリズム。頻繁に行われる途中の調子替え(転調のために箏柱を移動する)。1人1パートの四重奏。

本番の1週間前、まだ普通に弾くことすら覚束なく、もちろん、通して弾くこともできず、さすがに、私は「もう初演だし、楽譜見て弾いていいよ。」と言いました。そう言いながら、仕上がるのが遅かったことを申し訳なく思うばかりでした。

 

ところが、その9分の複雑な曲をたった2日で暗譜してしまったのです!

もう驚くばかり。こんなことができるの?と、腰が引けました(笑)。

高校生たちの力って本当にすごい。

ああ、なんでもできちゃうんだなあ。と、心底脱帽しました。

 

結果は3位。

残念ながら、全国大会には行けないものの、みんなで新しいものを作り上げ、生み出した喜びと達成感は何ものにも代え難く、爽やかな笑顔がはじけていました。

コンクールのために一部カットしましたが、部員のみんなと顧問の先生で相談して、なんと!文化祭のオープニングでノーカットで演奏してくれる予定です(私もスケジュールが合ったので、覗きに行こうと思っています。)

 

そして、8月24日、今年も尺八の大萩康喜先生をお迎えし、私の教室の恒例のおさらい会が無事終了しました。

出演者は、小学生から80代まで。

今年は小学生が5名、中学生が1名、そして、今回デビューした人は6名。

総勢31名。曲数も31曲。お客様は263名。

すべて最多。記録を塗り替えました!

7時間半に及ぶ長時間の演奏会を最初から最後まで聴いてくださったお客様もたくさんいて、嬉しさと感謝の気持ちでいっぱいです。

ありがとうございました。

 

教室生のみなさん、本当に頑張りました!

本番で一緒に演奏しながら(あるいは聴きながら)、1年の間に、山あり谷あり、笑いあり涙あり、いろんな局面があって到達したこの舞台が、まさに1年というマラソン(ドラマ?)のラストシーンのように思えました。

私は伴奏者ではなく、伴走者。

ああ、1年を一緒に生きたんだなあ。と、今回初めて実感しました。

 

本番中、みんながすごく輝いていて、

生きるってこういうことなんだ。

命ってこんなにあふれてくるもんなんだ。

と、もう1人の私が、空中から舞台を見ているような不思議な感覚になりました。

別世界からのぞいているような感じ?

感動というのとはちょっと違って、命の輝きと美しさにただただ目を見張っているような気持ちでした。

こんな経験は生まれて初めてです。

 

私の新たな冒険は、「作品づくり」と「コミュニティーづくり」。

 

ひとつは、今までのすべての経験を生かして曲を作ること。

曲というよりは音楽を作る。

自分にとって必要な勉強を探すことから始めて、学び、手探りで究極のハンドメイド作品を制作する。

 

そして、もう一つは、教室生のみんなと一緒に、箏で、音楽で、つながる新しいかたちのコミュニティーを作ること。

というか、今の教室を大切に育てていくこと。

これから特別な何かを始めるわけでも、何かが急に変わるわけでもないけれど、メンバーもお客様も増えたこの幸せに酔っていないで、自分が何をしたかったのかを整理し、確認し、足元を固めてあらたに出発しようと思いました。

 

33年かけて作り上げた教室独自のシステムは今も更新中。

時代の変化に呑み込まれず、過去のものにならず、

伝統をつなぐことが目的ではなく、結果になるように。

幸せが幸せを呼ぶように。

 

これは野望ではありません(笑)。

ただ幸せを追求するだけの、ゴールも完成もない夢。

 

とある小さな町にひっそりと佇む

こだわりのある本屋さんのような

特別おいしいパン屋さんのような

居心地のいいカフェのような

そんな教室を人生という森の中にオープンするような気持ち

 

私の手帳は、いつも9月始まり。

明日、まっさらな手帳を開いたら、未来の夢をまっさきに書き入れよう。

ささやかだけど壮大な夢!

See you soon!