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『西陽子 plays 箏百景』レポート③

2021-12-22T15:29:44+09:0012月 2021|

後半は未来に向かう箏をテーマにプログラムを組みました。 まずは、箏の可能性を極限まで抽き出した神田佳子さん作曲の「箏と打楽器のための練習曲No.1」。   これぞ箏の曲弾き!   今もこの曲を超えるユニークな作品はありません(断言!笑)。 左手に爪をつけて弾くのはもちろん至難の業だけれど、それよりもこの曲が八橋検校の考案した日本の伝統的な音階・平調子でできているということが本当にすごいと思うのです!(神田さん、天才!) 演奏というべきかパフォーマンスというべきか、打楽器奏者は先生、箏奏者は生徒という関係で、ちょっとしたストーリーのある芝居仕立て。それを音で展開していくのですが、笑いが出て、驚きがあって、楽しい! 大家さんの厳しくも優しい、ちょっと明治の文豪的なエヘン先生と、すぐ怠けてしまう優柔不断で情けない生徒の私との、ユーモアあふれるやりとりはお客さんに大層ウケました!   神田さんがこの作品を作曲されたのは、高橋悠治さんプロデュースの伝統楽器によるユニット「糸」の活動中。「ねえ、なんで左手に爪つけて弾かないの?横からだと弾けるんじゃない?」「あ。面白い!やってみるね。できるかも!」なんていう会話から出来上がっていった作品。「糸」の定番曲となり、どこで演奏しても大好評でした。 「糸」の練習場は、当時私が住んでいた江古田駅前のマンションのお部屋でした。作曲家の方達もたくさん集まって、楽器を囲んで演奏家と作曲家で新しい作品を生み出していきました。長時間一緒に過ごし、食事をしたり、広いベランダがあったので夏は花火をしたこともありました。 完全分業ではなく、特に伝統楽器や民族楽器の場合は一緒に楽器の性能を探りつつ作曲家と演奏家が一緒になって作っていくのは理想の環境。高橋悠治さんはリーダーの高田和子さんと共に、コンサートの機会を作ってくださり、作曲家に声をかけ、私たち演奏家にも多くのことを教えてくださいました。その時のご指導は私の音楽の礎であり宝物です。いろいろなものが混じりあったり、雑談があったり、無駄と思われるものの中に新しいものを生み出すチャンスが潜んでいるんですよね。 今まで見たこともないような新しくしかも質のいいものを生み出そうと思えば失敗や推敲も重ねるから時間もお金もかかります。ましてやグループとなれば・・・ 「糸」は理想でした。 高田和子さんと高橋悠治さんに守られ、環境を作っていただきました。そして、私たち演奏家も作曲家も若かった。仕事もお金もほとんどなくて、時間がいっぱいあって、社会的にも家庭的にも抱えているものがほとんどなくて、私たちは自由なひよっこでした。だからこそできた部分は大きい。その年齢にしかできないこともあるのですよね。  

『西陽子plays 箏百景』レポート②

2021-12-21T19:03:18+09:0012月 2021|

『西陽子 plays 箏百景』レポートは続きます。 「上弦の曲」が終わると、金屏風・緋毛氈の舞台から、パーカッショニスト・大家一将さんのパーカッションソロ、そして、十七絃デュオとパーカッションで2cellosの『kagemusha』、十七絃カルテットと尺八とパーカッションによるマイケルジャクソンの『Smooth Criminal』のクールな(自画自賛?笑)舞台へ。   大家さんの華麗で躍動感あふれるソロは、会場の空気を一気に動かしました。 スネアドラムたった一つで聴く人の心を釘づけに!   そして、いよいよ十七絃の登場!   私は十七絃の音が大好き。 深くて、温かみがあって、パンチがあって(この言葉は最近あまり使われないかな?と思って調べたら、関西ではよく使われるらしいです。要するに、エッジが効いてるとかインパクトがあるという意味ですが・・・んー。やっぱり昭和生まれとしては『パンチ』がしっくりきます。笑)カッコイイ。 アレンジしてよかった曲は、ほとんど原曲を聴いた瞬間に「これはイケる!」という直感が働き、さらに、アレンジしてみるとチューニングがピタリと17(箏なら13)個の音に収まります。これはもう偶然とは思えないミラクルなのです!その時の「きたー!」という気分はもう最高!!! 『kagemusha』は2019年のきのくに音楽祭で初演。客席からは「おー!」という声が上がり、今回もどなたかが「すごい!」と言ってくださったのが聞こえました。3分弱の曲ですが、十七絃のいろんな要素を盛り込んでアレンジしました。 『Smooth Criminal』は今回初演。重低音カルテット(江原優美香さん、植野由美子さん、中西裕子さん、そして、私)に辻本さんの尺八と大家さんのパーカッションが加わりました。辻本さんはこの曲をレコーディングされたり動画配信されたりして世界から注目されました。今回はアンサンブルをリードしてキレのいい演奏にしてくださいました。

『西陽子 plays 箏百景』レポート

2021-12-18T13:24:23+09:0012月 2021|

2ヶ月も更新できず、ここを訪ねて下さった方々には本当に失礼いたしました。 前回の更新の後、コンサートが続き、文章をまとめる余裕が全くありませんでした。一つのことに集中すると他のことはほぼできなくなってしまう不器用さゆえどうかお許しください。 この空白期間に、何からご報告すれば・・・というくらいたくさんのできごとがありました。 まずは、最近の話題からゆるゆると綴って参ります。   12月12日(日)新しくオープンした和歌山城ホールで行われた『西陽子 plays 箏百景』。開場時にわずかに残っていたチケットも即完売で売り止め。 sold out!約400席満員御礼となりました。感激!   前日11日は、朝10時~夜7時まで昼食時を除いてほとんどぶっ通しでリハーサルを行いました。この日全員で合わせるのが初という曲が11曲中5曲。楽器編成や構成も違うために音のバランスを聴きながら曲ごとにcm単位で舞台上の位置を選び、音を合わせ、アレンジには修正も加えていきます。 和歌山城ホールの音響は素晴らしく、全曲生音で気持ちよく弾くことができます。自然な木の響きが心地よい! 楽器を選び、柱を選び、爪を選び、作品それぞれのイメージを明確にし、最高の状態でお届けできるよう環境を整えていきます。 演奏者とスタッフが一丸となって詰めていく作業。 私はというと、明日の本番をピークの状態に持っていくためにも弾きすぎてはいけない。と思いつつ、つい演奏を始めるとスイッチが入ってしまって、中途半端な音では満足できなくなってしまい・・・結局制御しきれず、かなりめいっぱい弾いてしまいました。若い頃は、何時間弾き続けても疲れ知らずでしたし、たとえ疲れたとしても次の日には完全復活しているのが当たり前で、何の不安もありませんでした。 だけど、一度舞台で指が攣ったのを経験してから、自分のコンディションもちゃんと整えていくようにしなくてはと思うようになりました。

てんてこまいの秋の日々

2021-10-17T01:49:06+09:0010月 2021|

ご無沙汰してしまいました!9月中には更新しよう。と思いながら、気がつけば10月になり、もう16日になってしまいました。   9月25日のコンサートは、おかげさまで満員御礼!とても熱心にお聴きいただき、本当に嬉しかったです。ありがとうございました。 前半は私の作品、後半は藤枝さんの作品。曲はどちらも4曲ずつ(私の作品は3曲が新作初演、藤枝さんの作品は1曲が新作初演)、区切りなく演奏されそれぞれ30分の舞台で、私の作品は器楽のみ、藤枝さんの作品は全て歌が入るという構成でした。2年かがりで完成させる計画でスタートさせたので、来年、私は今回の作品を含めた組曲「海」を、藤枝さんは折口信夫の歌集から選んだ3首のうちの残りの2首をやはり箏歌に作曲し完成される予定です。 先日の演奏会の模様は、10月26日から11月27日まで動画配信がありますので、ぜひお聴きください。→https://nishiyoko2021.Peatix.com/view   コンサートが終わってすぐに和歌山でレッスンがあり、飛行機で移動。飛行機から降りる時に荷物を下ろそうと思ったところ五十肩の痛みをかばおうとして足を捻ってしまい、膝を捻挫してしまいました。 なんとかごまかしながら和歌山レッスンを終え、東京に戻ったと思ったら、今度はなんと!ぎっくりお尻に!ぎっくり腰は経験がないけれど、30代後半に初めてぎっくり背中になりました。コンサートのため、ベルリンからパリに移動して、パリでひとり3日間限定夢のアパルトマン生活をする予定が、結局どこにも行けず、とりあえず食料だけを買ってお部屋でうんうん唸り続け、夢は無惨に砕け散ったのでした(泣)。 その後、ぎっくり背中は2回ほどありましたが、今回は初のぎっくりお尻。お尻を起点に腰から股関節、膝まで電流が走り、動作を変えるたびに激痛が・・・。というわけで、もはや自力では修復ならず鍼治療に。   ああ、故障の連鎖が止まらない。   診察していただくと、「お尻がダイヤモンドになっています。」と言われ、「ええっ?お、お尻がダ、ダイヤモンド?」と聞き返したところ、「お尻が引き攣って下の方がえぐれてダイヤモンドカットされたようになっています。」とのこと。 施術を受けると、まさにマジック!!!たった1回の治療ですんなり立てる!!!すごい!!!(先生方ありがとうございました!涙) その後めきめき良くなっているものの、五十肩は時間がかかりそうで現在も治療中。でも、先日の治療では「今日はまあるい桃のようなきれいなお尻に戻ってますよ。」と褒められた?(苦笑)のでした。   治療と並行して、今月末から始まる国民文化祭関連のイベントなどなど練習しなければならない曲が山積み。楽譜を整えて揃え、段取りを考えながら練習をしているとあっという間に時間が経ち、結局いつも最後の曲までたどり着けず、練習を終えて夜11時頃になるとぐったりしてしまって文章が組み立てられない有様でした。

心づくしの秋は来にけり

2021-09-21T00:43:05+09:009月 2021|

気がつけば秋。爽やかな風に秋の到来を感じています。 そして、コンサート「西陽子 海界をうたう」の5日前! おかげさまでチケットも残り数枚となりました。 お運びいただける皆さまにはただただ感謝の気持ちでいっぱいです。 作曲は一応終了し、現在は演奏家モードで箏を弾き、歌っております。 プログラムの原稿も執筆中。なんとなく、文章が、お運びくださる皆さまへのお手紙になりつつあります(笑)。   さて、皆さまへのご案内をふたつ。 ☆ひとつめ。 Podcast「集まれ!伝統芸能部!!」に出演させていただきました。 演奏も含めいろいろとお話しています。私のレッスン室での収録でしたので、楽器を囲んで賑やかに楽しくおしゃべりしています。動画ではないので、家事をしながら・・・などラジオのように何かをしながらでも楽しんでいただけます。 邦楽とは全く無縁の環境で生まれ育ち、しかも、『昭和』の、『地方』から無知なまま上京し、箏の演奏家になった私だからこそのエピソード満載!沢井忠夫先生との出会いや受験時の恥ずかしいエピソード、無謀なチャレンジ話も入っています。 パーソナリティーの田中園子と甲田麻里さんの美声にも注目です! ぜひ、聞いてください! ★Apple Podcast ▷箏曲家 西陽子さんの演奏「花一夜」 ~粋な音

箏と本と私

2021-09-02T00:23:33+09:008月 2021|

教室のおさらい会を終え、2日くらい何をするでもなくぼーっと過ごしてしまいました。こういう日、今は大事です。 ダイジェスト版ではあるものの、パラリンピックを観てたくさんのパワーをいただいています。技の凄さはもちろんのこと、これまで歩まれた険しい道のりの上にある輝く笑顔。そしてさらに、もはや選手の肉体の一部となって支える人たちの存在。言葉ではうまく表現できないけれど、人間の力、美しさ、強さにただただ涙しています。   今はおさらい会から気持ちを切り替えて9月25日のコンサートに向けて曲作りに集中しています。 そんな中で、ふと、私は一生一緒に遊んでくれるおもちゃを両親から与えてもらったんだなあ。と思いました。母からは箏を、父からは本を。 どちらも、おしまいがなくて、さみしいときには遊んでくれて、人見知りの私にたくさんの出会いを作ってくれます。 父は本が好きで、家事は全部母に任せきりでしたが、本だけは自分の思うように並べなければ気が済みませんでした。私が子供の頃は、本屋さんが毎月来てくれて、お薦めの本などを紹介してくれました。父はその中から何冊か選び、全集などは月賦で支払う仕組みでした。本屋さんが帳面をつける様子は、八百屋さんが野菜を新聞紙に巻いたり、天井から吊り下げられた籠からお釣り銭を取ったり(もはや何のことかわからない人も多いと思いますが・・・笑)するのと同じように子どもの好奇心をそそるものでした。 そのおかげで自宅には日本画や世界の美術館の全集、歴史物が好きだった父の好みで司馬遼太郎や池波正太郎といった時代小説が数多くあります。 昭和のモーレツサラリーマンだった父はお酒を呑んで深夜に帰宅することが多く、玄関で寝てしまった父を母と寝室に引きずりあげることは日常茶飯事でしたが、たまに夕方普通に帰宅したときや日曜日などは、着物に着替えて、煙草をくゆらせながら本を読んだり、囲碁の定石とやらを熱心に学んでいました。 子供たちのために小学生や中学生でも読める世界文学全集や日本文学全集も揃えてくれて、2階の部屋でひとりゴロゴロしながら本を読むのはとても楽しかった。 母は、友達のお母様が弾いていた箏の音を聞いて、魅了され、箏を弾いてみたいと思ったそうで、少しは習ったようです。結婚する時、貧しかったにもかかわらず、わずかな貯金のほとんどを箏に充てたそうで、「夢を買ったのよ。」と笑っていました。私が今持っている一番いい楽器の龍舌には、母が亡くなる少し前に書いてくれた「夢」という書を入れてもらっています。そして、母は私の育児に追われとうとう箏を弾く時間はなく、箏は私のおもちゃとなってしまったのでした。   両親が私に与えてくれた二つのおもちゃ。   箏が「おもちゃ」であることが私の出発点だったのに、演奏家になって、職業になり、音楽で生活していきたい、これで生きていかなくちゃならない、と覚悟した瞬間に、「道具」となり、私は箏を上手に「使う」ためにコントロールしようと必死になり、極端に言えば、楽器にも自分にも鞭打ちました。 いつの間にか、箏は沈黙し、私はひたすら突っ走りました。 それでも、箏はずっとつきあってくれました。

これからの予定など・・

2021-08-13T00:23:33+09:008月 2021|

まもなく・・・と言ってから、こんなに時間が経ってしまいました。スミマセン・・・。 ともかく私は何をするのにも時間がかかってしまい、子供の頃から、父に「ぐずぐずしないで。はやくしなさい。」と言われ続けてきましたが、今だに遅い。ここに載せる文章も何度も書き直して、一晩寝かせてもう一度読んでようやく勇気を出して更新! つぶやきを全世界に発信するなんてどれだけの時間と勇気が必要か考えただけで恐ろしくなって(もはや“つぶやき”ではない!笑)、Twitterに憧れはあるものの、小心者の私は尻込みしたままこうしてHPに引きこもっております(笑)。勝手にインターネット世界の中でひっそり田舎暮らしをしている気分でおります。   夏の宵は好きです。空が深い群青色に染まると街がまるで海底のように思えて、人びとの話し声が泡のようで、とても幸せそうに聞こえます。   8月といえば、私の教室恒例のおさらい会! 最終レッスンも終わり、教室の皆さんは今頃ラストスパートをかけて頑張っていると思います。   前回記した「ワタシノナヤミ」とは、ずばり五十肩です(泣)。演奏はほとんど普通にできるのですが、左肩がある角度になると痛くてたまりません。着替えが一番つらい・・・(涙)ああ、もう老化の波が次々と・・・。 気力で全てを乗りきれた時代はもう終わったので、最近は休養も含めメンテナンスのための時間を作るようにしています。 体力が落ちて、人生も後半になって、弱くなって、今まで考えなかったことも考えるようになりました。身体の使い方、生活、生き方・・・ 強い時はなんでも思い通りになるから考えなくても済むけれど、弱ると思い通りにならないことが増えて考えざるをえなくなります。 いくつになっても学ぶことは尽きないですね。   詳細は追ってお知らせいたしますが、今年はこれから予定がたくさんあります。 まず、

京都・常光院(八はしでら)にて

2021-08-01T00:10:47+09:007月 2021|

猛暑が続きますが、皆さまお元気でお過ごしでしょうか? オリンピックでは熱戦が続いていますね。 7月18日の常光院でのコンサートは、八橋検校が眠られているお寺ということもあって、いつもとは違う緊張感がありました。「私はこのまま箏を弾き続けていいのでしょうか。」と、遥か400年前の八橋検校に教えを乞うという気持ちでした。本番前にお寺の裏の階段を上って墓前に手を合わせ、「どうかよろしくお願いいたします。」とご挨拶しました。   演奏に使用した楽器(みだれと古道成寺)は、江戸時代後期の名匠・治貞作の箏。 主催者であるえんの伊藤和子さんが所蔵されている楽器です。古楽器ともいえるこの楽器に絹糸をかけてくださいました。 芸大に通っている頃は、勉強会や定期演奏会、卒業演奏会といった節目の大きな演奏会では絹糸を使いました。もちろん音色の違いは感じましたが、正直、テトロンとの違いをそれほど極端に感じることはありませんでしたし、必然性をそれほど強く感じませんでした。 でも、治貞箏を弾いた瞬間に(最初はテトロンの糸がかかっていました)、これは絶対絹糸でなくちゃならない!と迷いなく感じました。それを伊藤和子さんも同時に感じ、結果、私たちの直感は大正解でした。私はただ、治貞箏と絹糸、それをつなぐ象牙の柱がうまく連動して自然に音が響くように、その交点というかポイントを探り探り糸を辿っただけ。 楽器本来の音を抽き出していく楽しさを堪能させていただきました。演奏家として最高に楽しい時間でした。まさに演奏家の本分であり、原点ですから。   「みだれ」を弾いていると、途中、蝉の声が大音響になり、そのうち雨が降りはじめ、手元では着物と絹糸が擦れて胡弓のような音が微かに鳴って、お客さんたちの静かな息の音が時折風のように聞こえてきました。その中で治貞箏の音が響くと、今がいつの時代なのかわからなくなってしまって、不思議な浮遊感がありました。音も命も生まれては消えていくものだけど、永遠のものでもあるような気がしました。時代は変わっても変わらないものがあると思えました。 弾き終えたとき、どこかへ旅したような気がしました。 常光院という特別な場所で、治貞箏という特別な楽器でなければ、味わえない特別な経験でした。   「古道成寺」は大好きな曲です。我が地元・和歌山県にある道成寺のお話ですし、ともかく楽しい!ドラマチックで、伊藤志野さんは語り部のように道成寺の世界へ誘ってくれます。古曲なのに、箏の手でこんなにもその場面の情景や、人物の心情が表現されている曲があるんだ!という驚きと感動をいつも味わっています。演奏中、前に座っていた子供たちがノリノリで(笑)、身体を揺らして楽しそうに聴いているのを見て嬉しかったです。 常光院の、蓮の花の可憐さ、大事にお手入れされたお庭、落ち着いた清廉な空気と包み込まれるような優しさの中で演奏させていただけて、本当に幸せでした。 何かを見せよう。という作為ではなく、ただそこにいて、楽器に導かれるままに楽しく音を紡いでいけばそれでいい。ということを教わったような気がします。

Koto Cross Composing Project 始動!

2021-07-08T02:09:24+09:007月 2021|

今年は『poetic』に続いて新しいコンサートシリーズ『Koto Cross Composing  Project』をスタートさせます。チラシにも書いていますが、このプロジェクトは、私が、尊敬し信頼するアーティストを迎え、お互いの分野に踏み込みながら新しい音楽、箏の世界を作っていく企画。 チラシPDFはこちら 今回は作曲家・藤枝守さんをお迎えします。一時期、私は、藤枝さん率いるモノフォニー・コンソートのメンバーとして共に音律を実験・探求し、1999年には彼の作品集であるCD『箏組曲「植物文様」』をリリースしました。植物の電位変化のデータからメロディーを抽出するのは植物の声を聞いているようでしたし、また、箏だからこそさまざまな音律でチューニングすることができ、そこから生まれる多彩な響きには驚きの連続でした。微分音を含む音律は、平均律に慣れ親しんだ私にとって最初はまるでめまいを起こしたような、乗り物酔いしたような気分がしてすごく抵抗がありました。 そのなんとも癖の強い響きは、発酵食品さながら、ものすごくハマる人と拒否する人に分かれ、コンサートをした時には、途中で「もう聴いてられない!」と気分が悪くなって帰られた音楽家の方もいらっしゃいました。特に厳密な絶対音感がある人にとっては拷問だったかもしれません。良くも悪くも絶対音感のない私はやみつきになるタイプでした(笑)。 楽器も最初はすごく抵抗して戸惑っているようですが、そのうちその響きに慣れて今までにはない箏の音を響かせるようになります。なんとも神秘的な実験でした。   作曲家と演奏家となると、どうしてもお互いに役割分担がはっきりしていて、刺激を受け合いつつも遠慮するところが多分にあります。今回は、旧友ならではのフランクな関係の中で、藤枝さんの作品に私が少し即興も含めたカデンツを入れたり、間奏を作ってみたり、また、お互いにアイデアを出し合ったりしながらコンサート全体を制作しています。若いお二人の演奏家・江原優美香さんと脇坂明日香さんにもただ楽譜をお渡しして弾いてもらうのではなく選曲から、曲ができていくプロセスにも参加してもらっています。   藤枝さんに委嘱した新作は、折口信夫の歌集「海やまのあひだ」から私の故郷和歌山県の熊野に題材をとった歌三首を選び(今回はそのうちの一首)、曲を作っていただくことになりました。海は私の原点であり、もしかしたら終点であるかもしれない。生命の始まりと終わりがそこにあるような気がしてなりません。 また、前半は私の作品「月夜の海」を拡大したような構成にしたいと思っています。 ぜひお運びください。よろしくお願いいたします! チケットのお申し込みはこちらです→ higotoyogoto_project@yahoo.co.jp  

コンサートのご案内「音絵巻」@京都

2021-06-26T01:19:01+09:006月 2021|

珍しく続けて投稿^ ^ 京都でのコンサートのご案内です。 音絵巻 no.4 〜慈音〜 2021年7月18日(日)16:00開演 会場:常光院(通称八はしでら) 料金:3000円(30名まで 要予約) 出演者:柳川三味線 伊藤志野 舞 西川影戀 箏 西陽子 演奏曲目:みだれ 古道成寺 老松 楽 茶音頭 主催・申込:えん(邦楽普及団体)072-683-6733  en-itou@mue.biglobe.ne.jp http://enn.moo.jp 延期になっていた京都でのコンサートがついに開催されます! 常光院には八橋検校が眠られているそうで、箏奏者にとっては特別な場所。そして、さらに今回演奏させていただく楽器は名匠治貞によって製作された名器。治貞は江戸時代後期の多くの随筆にもその名が残されているそうで、江戸時代後期にはすでに過去の人であったようです。一度弾かせて頂いたのですが、やはり絹糸との組み合わせ以外には考えられない。と主催者である伊藤和子さんとも意見が一致し、今回は絹糸をかけていただきます。 先日、伊藤志野さんと下合わせをしました。音を聴きながら、少しずつ弾き方を探っていくと、えもいわれぬ妙なる響きがするのです。音がどこから立ち上っているのかわからない・・・空中に突然雲のようにぽっかりと音が立ち現れるような感じがするのです。

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