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<栗生の海岸>
誰もいない白い浜辺。
曇っているせいか、浜に打ち上げられた流木がさみしげに横たわっている。
 
浜が白いのは、砂浜だからではない。
すべてサンゴ礁の残骸。
踏みしめて歩くと小さな白い骨のようにかたくなったサンゴ礁がぶつかりあって、
カラカラコロコロと硬質のいい音がする。
手にとってみる。
海の中でゆらゆらと揺れていたかたちが突然フリーズしたかのようになびいたまま固まっている。
海にいたときの記憶が語りかけてくる。
まるで昔話のように。
 
止まった時間。
おどろき。
大きなかけら
小さなかけら
こんなにもたくさんのかけら
拾い集めて手のなかで鳴らしてみるとやっぱりカランコロンかなしいくらいきれいな音がする。
浜辺いっぱいに広がる白いかけら
サンゴ礁の記憶が押し寄せてきて、それがこんなにも美しい響きとなって今ここにあるという現実が現実でないような気がした。
それぞれが何かを語っていた。
口々に。
かなしいけれどかなしくない
なみだはとまらなかったけど、やさしさに包まれていた。
そこには時間がなかったから
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