1月のイベントが全てキャンセルになり、21日の和歌山・吹上小学校でのおはなしの会も当然中止だろうと思っていたら、なんと!予定通り行われるとのこと。『ハープをひくハチとネズミとゴキブリ』の初演は無事終了しました。初めて聴くおはなしを、語り(語りは上甲ひとみさん)と音楽で聴くのは情報量が多すぎて混乱したのではという心配をよそに子供達は驚くほどよく見て聴いてくれていました。

このような状況なので、全員マスク着用、演奏前後のおはなしも質問コーナーも無し。それでも、子供達が書いてくれた感想文は好奇心と発見に満ちていて、逆に私の方が励まされたような気持ちでした。

ありがとう!皆さん!

 

その後のレッスン期間は、目の血管が切れたり、腰痛と股関節痛を発症するなど不調が続きました。職業病とも言える身体の歪みと加齢による筋力の衰えが大きな原因。おおごとではないけれど「やっぱり年だなあ」としょんぼり。でも、思い返してみたら、春先はいつもこんな風と自分を励ましてみたりして。昔は永遠に休まず箏を弾き続けられるんじゃないか。と思っていましたが、今は休憩大事(笑)。現在、整骨院の先生とピラティスの先生に相談しながら、自分の身体を感じて知ることを学び中。

そうは言っても、合奏していると楽しくて痛みも何もかも忘れてしまうから、人間の脳や身体は本当に不思議です。

 

レッスンでは、私の弾いたことのない曲を指導することもあります。五線譜を見て、そこからいろんなことを読み取って行く。作曲家が何を意図しているのか、それを想像して音にしていくのは本当に楽しい作業です。私はこのプロセスが楽しくてたまらない。だから、初演をすることは大好きです。

沢井先生は私にずっと、「自分が弾く前に他の人の録音を聴かないように。」とおっしゃっていました。なので、大学に入ってみんなが曲を与えられてすぐに音源を探すことに驚きました。さしずめ今ならまずはYouTubeを検索!でしょうか?

古典は口伝で受け継がれたものですから、楽譜より録音を聴く方がいいのかもしれませんが、私はどんな曲もまっさらの状態で自分の想像力を働かせて曲を完成させて行くことが何より楽しく好きです。一度誰かの演奏を聴いてしまうと、よほどの切り替え力がない限り全く影響されずにいることは難しいし、一から楽譜を読み込むことが面倒になってしまうそれは音楽を作る悦びの多くを失っているような気がしてもったいない

 

来る313日の西陽子箏コンサート「poetic」おかげさまで完売いたしました!お申込ありがとうございました。

新作は完成間近(ってまだ完成してないの⁉︎^^;)。作曲は、お手紙同様、夜中にひとりでエキサイトしても、次の日の朝もう一度弾いてみると、なんだ?これは?と思うことばかりで、また削って作り直して、時には捨てて、この繰り返しをひたすら続けて本当に少しずつ積み重ねていくのみ。

コード進行や対位法や和声を少し勉強したけれど、箏という楽器に当てはめると何か違和感を感じてしまう。もっと深く勉強すれば違うものが見えてくるのだと思いますが、そこは私の能力では追いつかないので、私は演奏家として楽器からアプローチする方法で曲を作ろうと決めました。

昨年、新型コロナウィルスの感染が深刻になる直前、長崎の五島列島をひとりで旅しました。そこで見た教会やマリア様の像に深い感銘を受けました。大きく立派な教会もあるけれど普通の民家にしか見えない教会もある。ヨーロッパで見たお顔に似ているマリア像もあれば、日本の優しいお母さんみたいなマリア像もある。でも、どれも尊く、あたたかく、跪かずにはいられない敬虔な光を放っていました。鉄川与助が中心となって建築された作品群だけれど、そこに関わったたくさんの職人さんたちの工夫とひたすらに祈りを捧げた人たちの夢が心に迫ってきました。

経験と感覚だけを頼りに手探りで曲を作っていると、自信がなくなって、諦めて、無難に体裁よくまとめる方向に流されそうになります。

そんな時は、五島列島の教会を思い出すんです。ものを作ろうとするときに一番大切なことを教えてもらっている気がします。

信じられないくらい残酷な拷問や弾圧を受けながらも命をかけて守られ伝えられてきた潜伏キリシタンの人たちの信仰。今、島の人口は減り、人々の価値観も変わって教会の維持さえも難しい状況だと聞きました。信仰の自由が認められてなんの障害もない誰もが待ち望んだ時代になったというのに、あっけなく崩れ去っていくなんて。私にとってそれは衝撃であり、理不尽であり、悲しみでした。

 

時代の流れは時としてそれまで積み重ねてきたものをあっという間に破壊し、価値観を根こそぎ変え、やがて、忘却し、何事もなかったかのように常識すらも塗り替えられていく

今、そんな時代の大きな転換点に私たちは立っているのかもしれません。

それでも命に限りがあることは変わらないし、私たちは生きているし、時間は止まらない

人との繋がり方はこの50年という短い間に大きく変化しました。多くの人と簡単に繋がることができるようになったのに、孤独感はむしろ深まっているように見えます。音楽は人と人をつなぐという大切な役割を担っています。

私がしたいこと、私にできることpoetic』で実現して行きたいと思っています。

313日心から感謝を込めて皆さんをお迎えし、色とりどりの音楽をお届けしたいと思います。お目にかかるのを楽しみにしています。

シリーズは継続していきますので、今回お運びいただけない皆様も次回ぜひお運びくださいませ。

末長くよろしくお願いいたします。

See you soon!