さて、『西陽子plays 箏百景』いよいよラストまでのお話。

 

神田さんの作品の次は、松本英明さんの作品「約束の空へ」をkotonosのメンバーと初演しました。

演奏していると、心が洗われて澄みきった青空を眺めているような気持ちになって、「大丈夫!明日からまた頑張ろう!」という希望が湧いてくる作品です。

弾き方、強弱はお任せしますということで任されてしまったのですが(笑)、そういう作為?は似合わないと思いました。ただ弾くだけで清々しくて、無理に歌おうとしなくてもメロディーが自然に歌ってくれるから。

これからも弾き続けていきますから、皆さんにもいつかどこかで聴いていただけると思います。そして、松本さんの今後の作品にも乞うご期待!

kotonosというのは、私の教室で私より若くて(笑)音楽活動をしている人たちのグループです。箏を弾く人たちの「巣」=『箏の巣(kotonos)』。ここから巣立っていくもよし、羽を休めに来てもよし、ここに来れば仲間がいるよ。という場にしたいと思いました。コトノスという音がギリシア風?なのもいいのでは。と勝手に思っております(笑)。

メンバーを固定しているわけでもなく、定期的な活動をしているわけでもありません。プロの演奏家として活動している人もいるし、アマチュアとして地域の活動に参加している人もいます。共通点を強いて言えば、箏への情熱。そして、メンバーそれぞれがちゃんと自立していることでしょうか。

ソロのレパートリーを持っていて、スタッフの仕事もできて、例えて言うならひとりでキッチンカーでも露店でもどこでもお店をオープンできるような人たち。

プロの演奏家の集団でもなく、アマチュアのグループでもないアンサンブル。

固定観念に縛られず、それぞれのスキルを持ち寄ってお互いに刺激し合い、面白くて新しいことを生み出せるクリエイティブな場になることを願っています。

 

そして、次は沢井忠夫作曲「詩(うた)」。

kotonosのメンバーと桐蔭高校箏曲部の卒業生有志が参加してくれました。

全員私が手ほどきから教え、子供の頃から指導した江原優美香さん以外は桐蔭高校で初めて箏に触れた人たちです。あっという間に上達し、今や助演して支えてくれる存在にまで成長した皆さん。いや、もはや、その強いエネルギーは、時には私を触発し、時には巨大な波のように覆いかぶさってくるのでした。

 

私は箏群のメンバーとしてこの作品を沢井忠夫先生と一緒に演奏した経験があります。ですから、ソロを弾くとその時の先生の音がありありと甦り、はっきりと聴こえてきます。もうすぐ先生が亡くなられて25年になろうというのに・・。

ずっと先生を追いかけてきました。先生が偉大すぎたので自分の才能の無さに落ち込むことはあっても競争意識に囚われることはありませんでした。

音色は千差万別。先生と同じ音を出すことは不可能。結局、私は私の道を探し、でも、根っこにはいつも先生のあの音がありました。

音色や表現が違っていたとしても、先生のように、激しく悲しく限りなく優しい音、楔を心に打ち込んで阻んでいるものを叩き壊し存在を根底から揺るがすような音、音楽を生み出したいと思ってきました。

 

今回のコンサートにもいらしてくださり、応援し続けてくださっている恩師・熊沢芙佐子先生(小学校の担任の先生でした)が小学校卒業の時に黒板に書いて贈ってくださった言葉は、「青は藍より出でて藍より青し」でした。

「あなたたちは多くを学び、私を超えて羽ばたいていくのです。」とおっしゃったことを今も鮮明に覚えています。

 

沢井忠夫先生を今も追いかけている自分。

そして、「先生」と言われる自分。

今、私はどの辺を走っているのだろう?と思います。

でも、そんなことはわからなくてもよくて、ただ一心に、めざすところがあれば走りゆくのみ。

まだ見つからないから。

まだ納得できないから。

 

プログラム最後の曲は私の自作曲「月夜の海」。

聴いてくださったお客様に、

共演者のみんなに、

支えてくれたスタッフのみんなに、

いつも応援してくれる方々に、

大事に育ててくれた両親と妹たちに、

たくさんのことを教えてくれた先生や友人に、

こうして今普通に生きていられる幸せに、

ただただ感謝の祈りをこめて演奏しました。

 

アンコールは、出演者全員で葉加瀬太郎さんの『情熱大陸』を演奏しました。

私のアレンジができたのは演奏会直前でしたが、箏曲部卒業生の皆さんも見事に演奏してくれました。

会場中にお客様の手拍子が響き渡り、心から楽しく、本当に幸せでした。

 

中学・高校時代からの同級生の友人が来てくれていて「今までで一番にっこ(私は小学校時代からこの愛称で呼ばれていました。)らしかった気がするよ。これがにっこのやりたかったことなんじゃない?」と言ってくれました。

 

箏を始めて50年以上経ってようやく私らしいコンサートができた?笑

 

でも、いろんなことに挑戦してきたからこそ『箏百景』を実現できたと思いますし、それが私の目指してきた私の音楽でもあるなあと思いました。

まだ皆さんに体験していただきたい箏の風景があります。

またすぐにお会いしましょう(See you soon! いつもの決めことばですが。笑)。

『西陽子 plays 箏百景』レポートはこれでおしまい。

 

さて、このペースで他のご報告が年内にできるのか。と皆さんお思いのことでしょう。(私もそう思います。笑)

今年もあと2日(汗)

See you soon!