今年は『poetic』に続いて新しいコンサートシリーズ『Koto Cross Composing  Project』をスタートさせます。チラシにも書いていますが、このプロジェクトは、私が、尊敬し信頼するアーティストを迎え、お互いの分野に踏み込みながら新しい音楽、箏の世界を作っていく企画。

西陽子 海界をうたう 西陽子 海界をうたう

チラシPDFはこちら

今回は作曲家・藤枝守さんをお迎えします。一時期、私は、藤枝さん率いるモノフォニー・コンソートのメンバーとして共に音律を実験・探求し、1999年には彼の作品集であるCD『箏組曲「植物文様」』をリリースしました。植物の電位変化のデータからメロディーを抽出するのは植物の声を聞いているようでしたし、また、箏だからこそさまざまな音律でチューニングすることができ、そこから生まれる多彩な響きには驚きの連続でした。微分音を含む音律は、平均律に慣れ親しんだ私にとって最初はまるでめまいを起こしたような、乗り物酔いしたような気分がしてすごく抵抗がありました。

そのなんとも癖の強い響きは、発酵食品さながら、ものすごくハマる人と拒否する人に分かれ、コンサートをした時には、途中で「もう聴いてられない!」と気分が悪くなって帰られた音楽家の方もいらっしゃいました。特に厳密な絶対音感がある人にとっては拷問だったかもしれません。良くも悪くも絶対音感のない私はやみつきになるタイプでした(笑)。

楽器も最初はすごく抵抗して戸惑っているようですが、そのうちその響きに慣れて今までにはない箏の音を響かせるようになります。なんとも神秘的な実験でした。

 

作曲家と演奏家となると、どうしてもお互いに役割分担がはっきりしていて、刺激を受け合いつつも遠慮するところが多分にあります。今回は、旧友ならではのフランクな関係の中で、藤枝さんの作品に私が少し即興も含めたカデンツを入れたり、間奏を作ってみたり、また、お互いにアイデアを出し合ったりしながらコンサート全体を制作しています。若いお二人の演奏家・江原優美香さんと脇坂明日香さんにもただ楽譜をお渡しして弾いてもらうのではなく選曲から、曲ができていくプロセスにも参加してもらっています。

 

藤枝さんに委嘱した新作は、折口信夫の歌集「海やまのあひだ」から私の故郷和歌山県の熊野に題材をとった歌三首を選び(今回はそのうちの一首)、曲を作っていただくことになりました。海は私の原点であり、もしかしたら終点であるかもしれない。生命の始まりと終わりがそこにあるような気がしてなりません。

また、前半は私の作品「月夜の海」を拡大したような構成にしたいと思っています。

ぜひお運びください。よろしくお願いいたします!

チケットのお申し込みはこちらです→ higotoyogoto_project@yahoo.co.jp

 

遠い遠い海の果て…

はじまりとおわりが出会う場所へ

 

See you soon!